大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪家庭裁判所 平成2年(家)3485号 審判

申立人 吉田江美

相手方 山本孝一 外7名

被相続人 山本トミ子

主文

被相続人山本トミ子の遺産全部につき平成5年11月30日までその分割をなすことを禁ずる。

理由

申立人は、平成元年6月14日死亡した被相続人山本トミ子の遺産が別紙遺産目録記載のとおりであるとして、これらの遺産につき相手方らとの間に協議が整わないため、遺産分割の調停の申立てをした。

当裁判所調停委員会は、7回にわたり調停期日を重ねたが、相手方孝二は、前期目録記載の不動産の全ては、いずれも相手方孝一と同勝が共有名義人として登記されているけれども、母である被相続人が子である同相手方らの名義を借りて共有登記をしただけであって、真実被相続人の所有で、全部遺産であると主張して譲らず合意の成立に至らなかった。

そして、相手方孝二は、申立人、相手方孝一及び同勝らを被告として、同相手方ら名義の共有持分が遺産であることの確認訴訟を提起してこれを確定する予定であり、被告とされる当事者も了承した。ところで、本件のように、遺産のうち主要な不動産全部につき遺産性が争われ、かつその争いを訴訟手続による確定を待つことに当事者間の合意がある場合にあっては、遺産分割の調停ないし審判による解決は事実上著しく困難であるから、前期不動産の持分の遺産性の有無が確定するまで、遺産の全部につき分割禁止の措置をとることが相当である。そこで、その期間は、訴訟の経過その他諸般の事情を考慮していちおう平成5年11月30日までとする。

よって、主文のとおり審判する。

(家事審判官 平井重信)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例